2005年4月5日
太陽系外惑星の直接撮像
最近、太陽系外惑星候補天体 (GQ Lup B) の直接撮像で盛り上がっていますね。
英語記事、日本語記事、プレプリント
さっそくプレプリントを読んでみたんですが、なかなか興味深いです。注目の質量のほうはなかなか精度よく求められないようで、彼らの計算では2木星質量程度という答えも出てくるようですが、理論モデルによっては 1〜40木星質量となるそうです。木星質量の13倍が惑星と褐色矮星の境界といわれているので、現段階では惑星であると断言はできない、という状況でしょう。他にも、興味深いことがいくつか。
ひとつめ:すばるのデータも使われてること。
本観測はESOのVLTが使われていますが、すばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡のデータも、アーカイブに公開されているデータを取得する、という形で利用されています。仮想天文台 (Virtual Observatory) としてデータアーカイブが整備されつつある昨今ですが、それがうまく利用されているわけです。スピッツァー宇宙望遠鏡などは、観測が行われてからあまり間もないうちにデータが一般に公開されます。観測を申請した研究者としてはその短い占有期間のうちに研究をしっかり進めなければいけないという厳しい面がありますが、外部のものとしてはデータが早く公開されるのは嬉しいことです。
ふたつめ:中心の星がとても若いこと。
プレプリントによると、中心の星の年齢は200万歳程度だそうです。これはとても若くて、普通はまだ星の周りに惑星のもとになる原始惑星系円盤が取り巻いているはずです。実際に過去の観測でも星を回る塵が放射する電波が検出されています。今回見つかった星が惑星であるとすると、こんな若い星に惑星を作るためには、これまでの惑星形成の研究をもう一度見直さなくてはいけません。
みっつめ:コロナグラフを使っていないこと。
太陽系外惑星を撮影しようとする時に普通は、明るい中心の星の光をさえぎるためにコロナグラフを使います。たとえばすばる望遠鏡の観測結果。しかし今回の観測はどうもコロナグラフを使わず直接写真を撮っているようです。真ん中の星が若いのでまだあまり明るくない、というのが大きいのかもしれませんが、コロナグラフを使うのが常識だと思っていたのでこれも驚きでした。
以上、簡単な感想でした。系外惑星の研究はどんどん進んでいて面白いですね。今週末の国立天文台三鷹観望会の解説でもネタに使おう。
投稿者 平松正顕 : 21:35 | hiramatsu log
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