2006年8月28日

続・惑星の定義

8月16日8月25日、に引き続き、惑星の定義のお話です。

これまでのマスコミのフィーバーぶりも驚きでしたが、ここにきてさらに驚き。読売、朝日、毎日の各社説にこの問題が登場です。

読売新聞:【[冥王星降格]「観測技術が変えた『惑星』像」】
朝日新聞:【冥王星 地球は君を忘れない】
毎日新聞:【惑星定義 論争が科学を面白くする】

どの社説もほぼ内容は一緒で、「科学は進んでいくもので、これを機に太陽系や天文学に興味をもつ人が増えるのではないか」という趣旨です。いろいろな報道でも各地のプラネタリウムの対応が取り上げられていますので、これがプラネタリウムの認知度を高めることに少しは寄与したのではないかと思います。普段は宇宙なんて意識しないし、ましてや冥王星なんて学校で習ったとき以来聞いたことがない方が多いはずなのに、こんなにも冥王星へのコメントが出たことは驚きでした。

あと今回の議論、科学の世界で日常的に行われている『論争』とは一線を画しますね。科学の論争とは、多くの研究者が様々な研究結果を発表しそれを積み重ねていくことでより真実に近い結論が出てくるものです。投票で決めるようなものではないわけです。今回のは科学的必要性というよりはむしろ、科学ではない部分からの要請、という面が強いわけです。毎日の社説にある『論争』が『一般の人の間の論争』を指しているなら、それはそうかもしれません。しかし「冥王星降格」としか伝えられなかった報道だけを基にした感情的なコメントが多いので、科学を面白くしたかどうかは良くわかりません。今回のことで太陽系の姿が多くの方の頭の中に描かれた、ということは全体的にはプラスだと思いますが、もっと多くの方に天文学が明らかにしてきた太陽系の広がりを知っていただきたいですね。

他には、アニメやSF、占いへの言及も多かったですね。松本零士氏のコメントもたくさん出ていますが、『太陽系の中の惑星だと固く信じていた。子供のころから宇宙に対して持っていた夢がぶち壊された感じがする』(スポニチ)と、どこかの占い師の『学会の呼び名が『惑星』でなくなっても、冥王星が太陽系に存在することに変わりはない。占いが影響を受けることは全くありません。(日刊スポーツ)』の対比が面白いです。冥王星はさらに遠くの宇宙への最前線基地に使われたそうですが、こんどはセドナあたりを基地にするというのはどうでしょうか。長楕円軌道を持っているセドナなら、待っていれば1000天文単位のところまで連れて行ってくれますよ。

今回の議論に関しては、新聞がその紙面的余裕を活かしてきちんと報道をしていたように思います。一方でテレビの多くのニュースでは、もちろん時間的制限も厳しいのでしょうが、「冥王星が惑星から外れる」ことしか伝えられていないような気がしました。「水金地火木土天海、うーん、なんだか拍子抜けですねぇ。」とか言っている余裕があるのなら、Mitaka でも見せながら「冥王星の辺りにはこんなにたくさん天体があるんですね。」くらいのコメントはしていただきたかったような気がします。

投稿者 平松正顕 : 00:47 | 惑星の定義について

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