2007年7月3日
アタカマからこんにちは。
ごぶさたしてしまってすみません。
実は今、出張でチリに来ています(日本との時差は13時間)。5月末に日本を出たのでまるまる一ヶ月日本を留守にしていることになります。もうまもなく帰国しますが、冬の砂漠である今の滞在地と、梅雨ど真ん中の日本とでは気候がかなり違うので、いまから体調管理に気をつけねば、と思っています。
今回の出張も、右の写真に写っている電波望遠鏡ASTE(あすて)に関連するものです(この写真を撮った日はあまり天気が良くなく、雲が見えています)。大きさがわかりにくいかもしれませんが、アンテナのおわんの直径は10mあります。いまこの望遠鏡には、マサチューセッツ大学(UMass)が作った144画素(残念ながら144"万"画素ではない。これでも現在稼動している電波カメラとしては世界最大級)電波カメラAzTEC(あずてっく)が搭載されており、その搭載に関連する試験観測と、その後の本観測のための渡航です。試験観測は無事に終わり、いまは実際に天体を科学観測するフェイズに移行しています。ちなみに"Aztec"というこの名前、日本語では「アステカ」ですね。メキシコに建設中の電波望遠鏡LMTに搭載予定なので、この名がついているのでしょう。
今いる場所は、チリ北部のサンペドロ・デ・アタカマという人口2000人くらいのオアシスの町です。望遠鏡はここから60kmくらい先の標高4800mの場所(チャナントール山周辺)にあるのですが、この町の標高は2400mです。20分も歩けば端から端まで行けてしまうような小さな町ですが、砂漠や高地、近くにある塩湖などを目的とした観光の町で、実際にたくさんの観光客・バックパッカーが来ています。町のウェブサイトもしっかりしています。「地球の歩き方」を持った日本人と思しき旅行者も見かけました。僕がここに来るのは今回2年ぶり5回目なのですが、以前は未舗装だった道が舗装されていたり、きれいなアウトドアグッズ屋ができていたりと、この町自体もだんだんと観光地化されているように思います。
この町は、日米欧が協力して建設している次世代電波天文台ALMAの山麓施設(OSF)に程近い位置にあって、数十km離れてはいますが山腹に建設中のOSFがよく見えます。まだいくつかの建物が見えるだけですが、完成予想図を見ると相当大きな建物群になるようです。また、私たちのオフィスの近くには、おなじくチャナントール高地に望遠鏡を構えるCBI、ACTのオフィスもあります。ACTは、先日めでたくファーストライト(天体からの電波を初めて観測すること)を迎えたそうで、これでチャナントール周辺の望遠鏡は5基になりました。CBI、我らがASTE、ヨーロッパのAPEX,名古屋大学のNANTEN2(上の写真左下に見えるかまぼこ型のドーム)、そしてACT。チャナントール周辺はチリ政府によって「科学保護地域」に指定されていて、建設中のALMAを始め、東京大学のTAOやアメリカのCCATなど、今後も天文台建設の計画が進んでいくことになっています。ハワイのマウナケアと並ぶ「天文台銀座」になる日も近いことでしょう。
投稿者 平松正顕 : 00:56 | hiramatsu log
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.tenpla.net/cgi/hlog/tt-cgi/tt_tb.cgi/109