< 2008年11月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >

2008年11月15日

系外惑星ネタふたつ。

太陽系外惑星の直接撮像成功のニュースが二つも飛び込んできたので、それについて書いてみます。

2005年には、ヨーロッパの研究者によっておおかみ座GQ星 (GQ Lup b) の周囲に惑星候補天体が撮影された、ということがありました。発表当時は「初めての『太陽系外惑星』直接撮影」と話題になりましたが、論文や公式なリリースでは「惑星の可能性のある天体」となっていました。簡単に言うと惑星かどうかはその質量が木星の13倍以上か以下かどうかで分類されます。その質量より重いとその星の中で重水素が核融合反応を起こすので、もはや惑星とは言わないわけです。で、GQ Lup b のときは質量の見積もり方によってその限界質量を超えたり超えなかったり、というものでした。つまり「惑星の可能性もあるけどそうじゃない可能性もある」と。この件はこのブログでも結構精力的に取り上げました。2005.04.05 2005.04.11 あたり。

で、今回。一つはハッブル宇宙望遠鏡による成果で、秋の夜空唯一の一等星として有名なみなみのうお座のフォーマルハウトに惑星が一つ(上に貼った写真。NASAは著作権を主張しないのでこういうときに気軽に利用できます。)。もう一つは、ハワイの山の上にあるジェミニ望遠鏡による観測で、HD8799という番号しかついていない星の周りに一度に3個。いずれも、惑星と比べて明るすぎる中心の星の光を隠す「コロナグラフ」という手法が使われています。両方の画像の中心が抜けているのはそのせいです。ジェミニのほうは、こちらのページにその星の見つけ方が書かれてあります。ペガスス座の中のようですね。もちろん惑星は見えませんが、「あの星の周りに惑星がまわっているのかー」と思いを巡らしつつ秋の夜空を楽しむのもいいですね。

ハッブルによる成果は、2004年と2006年に撮影した同じ天体の画像で、光点が確かに動いていることが確認でしたので惑星であると結論したようです。ジェミニの方もこのページの一番下の写真で、2004年から2008年の間の動きが見てとれます。ある星の近くに光る点が写っていたとしても、遠くの星がたまたま近くに見えているだけかもしれませんし、あるいはそもそもノイズである可能性もあります。リリースされたハッブルの画像を見てみると、その光の点はわずかに10ピクセルほど。2006年の撮影から2年たって結果が発表されたわけですが、この10ピクセルが確かに天体であり、動いている惑星であることを確認するのにはそれだけの時間がかかるのです。プレスリリースの文章には、この観測計画自体は2001年から始まっていたと書かれてあります。以前のハッブルの観測から、フォーマルハウトのまわりに塵の円盤があることはわかっていました。この円盤が中心の星に対してちょっとずれていること、それからその円盤の内側のふちがシャープであることなどから、内側に惑星があるのだろうと言われていました。観測計画が始まって論文として世に出るまで、実に7年。忍耐です。(対して普通のポスドクの契約期間は2,3年。こまめに成果を出しつつ時間のかかるデカイ仕事をすることが求められますね。)

ハッブルの見つけた惑星、公転周期が872年だそうです。中心星からの距離は100天文単位くらい。地球と太陽の間の距離の100倍、太陽から海王星までの距離の3倍。遠いですね。これだけ中心の星から遠いところにどうやって惑星を作るのか、たぶん理論的にはまだ解明されていないんだと思います。新発見からまた次の疑問が出てくる、観測と理論が抜きつ抜かれつで前に進んでいくという良い例ですね。はっきり言ってキリがないですが、でも人類はそうやって自分の世界を広げてきたので。

投稿者 平松正顕 : 01:22 | 報道にコメント

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.tenpla.net/cgi/hlog/tt-cgi/tt_tb.cgi/210

コメント

今日は よろしくお願いしますね^^すごいですね^^

投稿者 グッチ バッグ : 2012年11月10日 04:44

コメントしてください




保存しますか? はいいいえ