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2008年5月15日

学生によるサイエンスカフェ

"SciencePortal担当です。"ブログに、『学生が話題提供者になるサイエンスカフェ』についての言及があって、"Science and Communication" ブログでも取り上げられています。私たち天プラはこれまでいろんなサイエンスカフェを学生主体でやってきたので、その経験を少しご紹介します。

天プラはそもそも設立当初から、学生とプラネタリウムの協働を目指していました。今ではプラネタリウムに限らず地域NPOや小学校などとも協力していろんな活動をやってます。これは、サイエンスカフェでもそれ以外の活動でも学生であることの利点を最大限活かせると考えたからです。

まず、若いこと。サイエンスカフェでは単なる講演会ではできないような気軽なディスカッションや質問ができることがキモですが、相手が偉い先生だとなかなか難しいもの。相手が学生なら、子供たちからすればお兄さんお姉さん的存在、20代(この年代を集めるのは難しいですが)からすれば同世代、それより上の年代の方にとってみれば弟妹・子供・孫といった世代の人間が話題提供者となることで、より話しやすい雰囲気を作れるのではないかと思っていますし、実際天プラでやったカフェでもそれは実現できたと思っています。結果として、天プラが目指す『多くの人が一緒に天文学で楽しむ場』を作る手段としてサイエンスカフェというスタイルを利用することができると。サイエンスカフェは目的ではなくて手段であるはずです。

そして、学生にとってもメリットは大きいこと。"SciencePortal担当です。"ブログにもあるように、自分の研究分野についてわかりやすく説明をするということは研究者になってからも必要なスキルです。これは一朝一夕にできるものではないと思うので、早いうちからちょっとずつ経験を積んで練習しておくことが重要なんだろうと思います。さらにこういう場所で普段接しない人たちと接することは、学生にとってみれば研究のモチベーションを向上させるという側面もあるかと思います。研究って結構孤独なもので、果てしなく広がる暗黒の宇宙に対してひとり戦いを挑んでいるような気持ちになることもあるのです。サイエンスカフェみたいな場で自分の研究に対して『面白い』とか『がんばって』とか言われると、なんだか応援してくれる仲間を見つけたような気がして研究にもより力が入る。天プラやその他のところで行わるサイエンスカフェに話題提供側として参加した学生の多くは、そんな体験をしています。これって、望ましい社会と科学の関係のひとつだと思うのです。

もちろん、『ゲスト:○×教授』というほうが集客力はあるかもしれません。そのサイエンスカフェが何を目指すのかによっても違ってくるかとは思いますが、ある程度常連さんのついたサイエンスカフェとか、そんなに集客しなくてもいい場では、学生を起用してみるというのも面白いと思います。そういう場に慣れていない学生が大多数だと思いますが、逆に『素の研究者』の姿を垣間見られるという意味でも面白いでしょう。

天プラはこれまで、2005年10月のサイエンスカフェ札幌第1回をはじめとして、調布飛行場や札幌や三鷹の小さなレストランやカフェなどで、学生を前面に押し出したサイエンスカフェを行ってきました。天プラ主催のものはネットに告知を打つほどでもない地域密着型の小さなものが多いので、サイエンスカフェ・ウォッチャーの皆様の目にとまらないのかもしれませんが、天プラ主催でなくても周辺では天塾サイエンスカフェや湘南国際村フェスティバルの総研大サイエンスカフェなど、学生が話題提供者となるサイエンスカフェは結構あります。天プラ周辺の学生はプラネタリウムや科学館などでのボランティアの経験がある人が多いですし、僕自身国立天文台の定例観望会で何年もお手伝いをしていたので、平均的な学生よりは対話に慣れているという面はあります。研究発表と違って気軽なディスカッションであればあるほど応対の力量が問われます。必ずしも提供した話題の範囲内で話が展開するとは限りませんし、全然専門外の分野に飛んでいくことのほうが多いはずです。なので、どこの学生を引っ張ってきても対応できるわけではないでしょう。でもそれってたぶん研究者でも同じ。

本当は、天プラのこういう活動について文章を残すなり論文書くなりすればいいんですが、なかなか研究も忙しいのでこれまであまり実現できていません。夏ごろ発行予定の蛋白質 核酸 酵素には、天プラの活動のある意味ではまとめ的な文章が掲載されますので、お楽しみに。それと、科学技術社会論/科学コミュニケーション/地域活性化/NPO活動 などの視点で、どなたか天プラの活動を研究していただけないでしょうか?この変な活動を思いもよらぬ角度からバッサバッサと切っておいしく料理していただける方、募集中です。

投稿者 平松正顕 : 15:59 | サイエンスカフェ

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コメント

平松さん
TBありがとうございます.
PNE(蛋白質 核酸 酵素)は,発行されたら読むようにしますね.
サイエンスカフェ札幌の第一回や総研大サイエンスカフェ,あと昨年の科学技術週間サイエンスカフェ,三鷹のリレーサイエンスカフェあたりは認識していますが,もっと細かいもの(ネットでなかなか見つけられにくいもの)は正直なところノーマークです.

個人的には,取組みの遅れている,天文「以外」の分野のサイエンスカフェをなんとかしたいですね.

投稿者 K_Tachibana : 2008年5月15日 22:44

平松さん
TBありがとうございます.
望むらくは,「天プラ」式取組みが他の分野の研究に関わる若手にも広がるといいと思っています.もしかすると,大阪での院生の一般を対象とした研究発表会はいい方向で大化けするかも知れない.
PNE(蛋白質核酸酵素)に載せるというのは,ライフサイエンス関係の人にも,「天プラ」式取組みを広げたいという加藤さんあたりの意向もあるのでしょうね.

投稿者 K_Tachibana : 2008年5月15日 22:53

K_Tachibanaさん、コメントいただきありがとうございます。

天文分野ってアウトリーチでも幾分か進んでいましたよね。今ではほかの分野でもいろいろ面白いことやっているんで、分野横断的なイベントも面白そうです。科学技術週間やアゴラみたいなのもいいですが、全然違う分野の人がひとつの場所でひとつのことについて語り合うとか。学際なんとかも流行っていることですし。そうすることで、さらにいろいろなことができそうです。

東大理学系研究科の横山さんと院生が中心となった 0to1 がそんな感じで、色々企画しているようなのでこうご期待。

投稿者 平松正顕 : 2008年5月16日 01:26

明日,横山さんと会う予定があるので0to1についてお聞きしてみようと思っています.
サイエンスアゴラだと時間の制約で交流が難しかったりするので,別途機会を設けたほうがいいかもしれませんね.

投稿者 K_Tachibana : 2008年5月16日 06:23

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