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2009年9月27日

ALMAアンテナ山頂へ(動画あり)

今月はブログの更新が少なかったですが、ふたつの望遠鏡の観測提案締切があったので忙しかったのです。ひとつはハワイ、マウナケア山頂のSMA、もう一つはアリゾナのSMT。観測ターゲットは共通で、とても暗い原始星です。SMAへの観測提案は2度目、去年の同時期に出したものは不採択だったので今回は何とか観測時間がもらえるといいなと思っています。いっぽうSMTは初めて。始めて観測提案を書く望遠鏡は、そもそもその望遠鏡にはどんな観測装置(カメラ)が載っているのかとかどんな性能なのかというのを調べるところから始まるのでなかなか時間がかかります。

さてそんなことをしているうちに、ALMAの最初の電波望遠鏡が標高5000m地点に運ばれたというニュースがリリースされていました(国立天文台のプレスリリースwired visionの記事)。今回のニュースは日米欧同時リリースで、アメリカ国立電波天文台NRAOからはTwitterで、ヨーロッパ南天天文台ESOからはメールマガジンで今回のニュースが届きました。それぞれ少しずつ違いますが、日本のALMAとESOのページには写真がたくさんあっていいですね。一方でALMA本体(Joint ALMA Observatory)のニュースリリースには写真とともにしっかりしたニュース動画がアップされています。英語・スペイン語字幕ですがその雰囲気は十分に伝わってきます。
【10月10日追記:Youtube動画見つけたので貼っておきます。】


ALMAの口径12m/7m電波望遠鏡は、標高2900mの山麓施設で組み立て・試験をしてから標高5000mのサイトに専用台車で運ばれます。28輪のドイツ製モンスタートラックで望遠鏡を運ぶ様子は圧巻です。この巨大な台車をリモコン操作で微調整して望遠鏡を持ち上げ、そして移動先の低酸素環境でぴったり所定の位置に据え付けなくてはいけません。酸素ボンベ持ってるのかもしれませんが、それにしてもドライバーさんにとっては大変な仕事には違いないでしょうね。

今回リリースされた動画、運ぶ様子以外にも注目です。山麓施設では空はベタ曇りなのに5000mサイトに行くと青空が広がっているというのは、このサイトの気象条件の良さが表れているといっていいでしょうね。ただし、インタビューの中にもありますが吹きっさらしなので風が強くて寒いのです。みんな顔まで覆う怪しげな重装備をしているのはそのせい。そして標高が高いせいで、青空が普通の青空よりも暗いのです。最後のインタビューでは、この記念すべき仕事を成し遂げた台車のドライバーさん、アンテナ組み立てのリーダーたちが誇らしげに話をしているのが印象的です。最後の方の言葉にあるように、アンテナ本体は日本製、中に入っている受信機システムは北米製、キャリブレーションシステムは欧州製。それがチリで組み上げられ、試験を経て山頂に運ばれてきたのはALMA完成への大きな一歩です。アンテナはこれから65台以上、同じ行程を経て山頂に運ばれます。そして観測が始まった後は日常的に数台ずつアンテナの位置を移動させて、ズームレンズのようにして強拡大画像を取得したり広がった天体を観測したりします。今回動画リリースされたような風景が日常の風景になるわけで、それはすごいことだなぁ、と感じます。

[画像:© ALMA (ESO/NAOJ/NRAO) ]

投稿者 平松正顕 : 19:04 | hiramatsu log

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