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2009年9月2日

ウィルソン山天文台の危機

カリフォルニアでの山火事がかなり大変なことになっているようです。こちらのページの写真を見ると、ちょっとやそっとの消火活動では手に負えないほどまで燃え広がっているようですね。

火災が起きている山の近郊には、アメリカの惑星探査の多くを運営し素晴らしい成果を連発している、ジェット推進研究所(JPL)があります。その近くのウィルソン山には、これまた輝かしい成果を残してきたウィルソン山天文台があるのですが、ここにも火の手が迫っているようです。ウィルソン山から西の方角を映しているライブカメラの映像を見ることができますが、隣の尾根にある電波通信所が火災の煙でかすんでしまっています。このエントリを書いている時点では、まだこの角度からは炎自体は見えていないようですが、その尾根のすぐ向こうまで火災は広がっているようです。NASAの衛星画像でも、火災がすぐ近くまで迫っていることが見て取れます。

このウィルソン山天文台は、天文学の歴史上非常に重要な場所です。この天文台は1904年に設立され、現在はカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)とカーネギー研究所の天文学研究部門が共同で運営にあたっていますが、これまでに「我々の太陽が銀河系の端の方にあること」「我々の銀河系の外にたくさんの同じような銀河があること」、そして「遠方の銀河は我々から遠ざかっていること」など、当時の天文学を揺るがす大発見がなされてきました。上に挙げた3つ目の成果は、宇宙望遠鏡の名前で有名なエドウィン・ハッブルがこの天文台での観測から導き出した結論で、宇宙が膨張していること、宇宙がビッグバンから始まったということを観測的に示唆するものです。今の天文学が描いている宇宙像の基本が作られたのがこのウィルソン山天文台であり、それは人類の宇宙観を大きく変えた成果です。その観点から言えば、天文学史上重要なのはもちろんのこと、人類史上においても大変大きな役割を果たした施設であるわけです。その輝かしい伝統を引き継いで今も先端的な観測装置を装備して観測を行っているこの天文台が、この火災で危機に瀕しています。アメリカの天文誌Sky & Telescopeのウェブサイトでも、逐次情報が更新されています。

この近辺では2007年にも山林火災が発生し、その時もウィルソン山天文台とパロマー山天文台が一時閉鎖されました(その時のニュース記事)。また2003年には、オーストラリアのストロムロ山天文台がやはり山林火災に襲われ、貴重な観測資料も望遠鏡もほぼ消失してしまいました。天文台のウェブサイトに写真がアップされていますが、黒こげになった望遠鏡が痛ましい限りです。

天体観測には晴れて乾燥した夜が欠かせません。が、良い観測条件をもたらしてくれる乾燥が、逆に火災を被害を広げてしまうという皮肉な結果になってしまうのかもしれません。遠くからはどうすることもできませんが、少しでも早く火災がおさまって被害の出ないことを祈るばかりです。

投稿者 平松正顕 : 01:05 | hiramatsu log

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コメント

Pasadenaも煙のせいで視界が悪いですよ。
煙くさい臭いもするし、たまに灰みたいなのも舞ってます。

近くにいても、どうすることもできないんですよね…
今日はちょっと湿度高めと思っても、40%くらいだし。
雨、降らないかなぁ。

投稿者 fumi : 2009年9月2日 06:12

fumiさん、現地からのコメントありがとう。
天文台のウェブカメラ見ても煙がすごいもんね。
台湾の湿度を分けてあげられたらいいのに。

投稿者 平松正顕 : 2009年9月2日 13:22

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