2010年3月21日
野辺山滞在中。
18日より、長野県の国立天文台野辺山宇宙電波観測所に滞在しています。45m電波望遠鏡を使った観測のためです。
18日は東京から中央線・小海線経由で野辺山に来ました。小淵沢で特急あずさを降りた時に雪がちらつき始め、小海線で甲斐小泉、甲斐大泉、清里と標高が高くなっていくにつれて雪も激しくなっていきました。幸いにも18日の夜のうちに雪はやんだようで、19日の午前中から始まった観測には影響ありませんでした。写真は、19日の朝に撮った45m電波望遠鏡。このときはまだ地面が雪におおわれていますが、昼ごろには完全に融けてしまいました。
今回の観測は、昨年末にハワイのサブミリ波干渉計SMAで実行したペルセウス座にある若い星の観測のフォローアップです。宇宙にあるガスが集まって星になるわけですが、そのガスに含まれる様々な分子が放射する電波を観測しています。特定の分子が出す電波を観測できるように、電波望遠鏡をラジオのようにチューニングすることで、密度の高いところを選択的に見ることができたり、ガスの温度や運動の様子を調べることができたりします。SMAの場合は分解能が良いので、今作られつつある星の周囲500天文単位(1天文単位は1億5000万km、冥王星軌道の直径が約80天文単位)の様子を調べましたが、今回はそれより10倍弱大きなスケールでのガスの運動の様子を調べる観測です。これを調べることで、誕生しつつある星の周囲のガスがそのまま星に落下していって星が太っていくのかそうでないのか、などということを知ることができます。実際には宇宙は複雑なのでそう簡単ではないのですが。
とはいえ、昨日から日本中で吹き荒れている春の嵐は野辺山にも届いていて、昨日今日は強風のため観測ができませんでした。写真のとおりドームなどで覆われていない45m望遠鏡は風の影響を受けます。10m/s程度ならあまり問題ないのですが、20m/sを超えるような強風の場合はアンテナを守るために、風の影響を受けにくい位置、つまり天頂に向けて停止させます。僕はこれまで自分の観測と共同研究としての観測で100時間以上この望遠鏡を使ってきましたが、20m/sを超えて観測強制停止というのは今回が初めてでした。残念ですが自然が相手なのでしかたありません。そしてもともとの観測割り当ては明日を残すのみ。予報によれば明日の天候は回復し風は収まるようなので、明日は無事観測できることを祈っています。
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