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2010年8月20日

チリ出張

またまたごぶさたしてしまいました。
このところ忙しかったのは、表題のとおり、チリ出張に出かけることになっているからです。今週土曜日から2カ月、チリに出張してきます。最後の一週間は、スペイン・カナリア諸島で開催される研究会"The Origin of Stellar Masses"に参加して、ヨーロッパ・アジアを超えて帰ってきます。初の世界一周チケットでの出張です。

2ヶ月もチリに行って何をするか。観測ではありません。このブログでも何度か書いている通り、国際協力のもとで新しい電波天文台ALMAがチリに建設されています。来年の観測開始を目指して建設と調整が急ピッチで進んでいて、その活動に参加するための出張です。

望遠鏡は、工場で作って建設予定地に置けば動く、というものではありません。設計段階から何度も何度も評価試験を繰り返し、そののちにやっと製造。作ったら、ALMAの場合はチリに持っていって再調整。ALMAに使われる口径12mや7mのパラボラアンテナは完成形で持っていくわけにはいかないので、現地でもう一度組み立てる必要があります。製造業者が再組み立てを行い、そこに研究者も加わって評価試験を繰り返し、ALMAの要求する仕様を満たしているかどうかが厳しくチェックされます。このチェックが終わったら、製造業者からALMA観測所に所有権が移動します。この後も、観測所のスタッフがさらに様々なチェックや性能向上のための作業を行い、世界最高性能の電波望遠鏡を実現するための努力が重ねられます。

ALMAは、非常に複雑なシステムです。パラボラアンテナ型の電波望遠鏡、その中に搭載される受信機(デジカメでいえばCCDに相当するようなもの)、たくさんのパラボラアンテナで受信された信号を処理する「相関器」と呼ばれる専用スパコン(再度デジカメで例えるなら画像処理エンジン)、その他もろもろの部品と、それらを制御するソフトウェア。数多くのテストをクリアしてきた個々のコンポーネントはそれぞれの仕様を満たしているはずですが、それを統合してひとつの巨大な電波望遠鏡として稼働させるには、さらにいろいろな作業が必要です。この段階の作業のことを、ALMAではCSV (Commissioning and Science Verification)と呼びます。日本語にすると何でしょうね、「試験運用・科学評価活動」とかでしょうか。チリでは、このCSVに参加します。

現地には、世界中から天文学者が集まってこのCSVを進めています。ALMAのウェブサイトのニュースにあるように、現在建設地の標高5000m地点には、パラボラアンテナが7台あります。これが最終的には66台になるわけで、これからどんどんアンテナと受信機が運び込まれ、まだまだCSVは続きます。

来年、パラボラアンテナと受信機が16台そろった時点で、ALMAは観測を開始する予定です。この時点ですでに世界中にある同種の電波望遠鏡を大きく上回る性能を持っているので、全66台がそろうのを待たずに観測を始めます。来年観測が始まってからもどんどんアンテナと受信機と相関器が追加されていき、観測と並行して新しく来たコンポーネントのCSV活動が行われていく予定になっています。

個人的には、大学院時代に5回チリに行って以来、3年ぶりのチリ渡航です。最初にチリに行った2003年時点では、今アンテナが立っている標高5000m地点にあるのはコンテナハウスがいくつかと、将来ALMAのアンテナが設置される場所を示す小さな木の札でした。それがもうアンテナが7台、そしてあと2年くらいのうちにアンテナが66台に。長い出張で不安もあるのですが、楽しみであるのは間違いありません。

現地に行っても、時間を見つけてこのブログを更新していきたいと思います。よろしくお付き合いくださいませ。

投稿者 平松正顕 : 00:01 | 海外出張日記

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コメント

あちらは今、真冬ですね。お身体にはお気をつけて!

投稿者 inami : 2010年8月20日 01:40

匿名なのに、私には誰だか分かる・・・(^_^;)ありがとう。。。

投稿者 グッチ アウトレット : 2012年11月10日 07:52

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