2010年9月1日
チリ出張10日。
先日の記事に書いたように、8月21日に台湾を出発して、香港・ニュージーランドを経由してチリにやってきました。8日間、標高3000mの地点にあるALMA Operation Support Facility(OSF)に滞在して仕事をし、今はサンチアゴに降りてきています。天文学者は8日間のOSF滞在と3週間のサンチアゴ滞在を繰り返すシフトを組んで仕事をし、OSFではまた1日3交代制のシフトが組まれてそれにしたがって仕事をするのです。
僕がこちらでしている望遠鏡の立ち上げ試験(CSV)という仕事に関しては、上記の8月20日の記事をご参照いただければと思いますが、実際に参加してみて、だいぶ現状が把握できました。
標高5000mに運ばれた望遠鏡を標高3000mのOSFにあるコントロールルームから制御して、様々な試験観測がおこなわれています。試験観測と言ってもまだまだ初歩的なもので、例えば低温強風の厳しい環境下でも時間とともに刻々と動いていく天体を電波望遠鏡で高い精度で追尾できるかどうか、あるいはフォーカスのずれは想定通りか(温度によってごくわずかに部品の伸び縮みがあるので、ピント位置が若干ずれる)、天体から放射される電波の強度をきちんと測れているか、実際の観測で行われるような様々なセッティングでの観測を試験してみてトラブルが起きないかどうか、などです。正直言ってまだトラブルはでてきますが、それを早めに出しておいてきちんと対処するというのがこの立ち上げ試験観測の目的でもあるので、コンピュータグループ、アンテナグループなどが粛々と対処を進めています。
立ち上げ試験には様々な項目があるので、それぞれチームを作って担当者を決めて進めていきます。担当が割り振られたら、どのように望遠鏡を操作してその試験項目をチェックするか考えて望遠鏡を動かすプログラムを書き、それをオペレータさんに実行してもらいつつ隣でそれを見守って、ちゃんと期待通りに動いているかどうかチェックします。何かトラブルがあれば原因を探り、ちゃんと試験観測が実行されれば取れたその場で(あるいはサンチアゴに帰ってから)データを解析します。その解析結果から、その試験項目がクリアできているかどうか判断するわけです。そして結果を専用のウェブサイトにまとめ、毎日のOSF-サンチアゴオフィス間のテレビ会議で報告し、その次の試験項目を検討する、という流れになっています。
このテレビ会議が実は曲者。ALMAは東アジア・ヨーロッパ・北米・チリの合同プロジェクトであるため、いろんな国出身の人が集っています。というわけでメンバー(日本人も含めて)が話す英語はそれぞれのお国訛りがあって、もちろん個人的な口調の違いもあって、聞きとりやすい英語と聞きとりにくい英語が入り乱れて一苦労。しかもALMAは専門用語を略語にすることが多くて、これも把握するまでがまた一苦労。頻繁に登場する略語については少しは慣れてきましたが、英語についてはまだまだですね。
写真は、OSFの建物(左)と日本(国立天文台/三菱電機)のアンテナ組み立て評価エリア。どこまでも青い空に、白いアンテナと白い建物がよく映えます。湿度数%の厳しい環境ですが、今まさにALMAが立ちあがっていくという所に参加できるというのは感慨も大きいものです。僕はまた来週月曜日からOSFに8日間滞在して、今度は本格的に仕事をしていくことになっています。
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