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2010年9月23日

アンテナとマゼラン雲

先日の天の川に続いて、アタカマで撮影した天体写真をもう一枚ご紹介。前回と同じくALMAのコントロールルームのあるOperation Support Facility(OSF、標高3000m)で撮影した、ヨーロッパ製アンテナと大小マゼラン雲です。ぼんやりと雲のように広がる二つの塊がみえるでしょうか。画面中央、クレーンの上に見えるのが小マゼラン雲、アンテナのすぐ右上に見えるのが大マゼラン雲です。

南天の夜空のハイライトと言えば、南十字とこの大小マゼラン雲でしょうね。この雲のような天体は、マゼランがその世界一周航海の最中に記録したことからその名があります。もちろんこの天体は雲ではなくて、星の大集団=銀河です。その意味では、大小マゼラン銀河と呼んだ方が正確かもしれません。大きさはわれわれの住む銀河系の約1/10、太陽から15万〜20万光年離れたところにある銀河系のお伴の銀河たちです。僕がマゼラン雲を初めて見たのは、2003年に始めてチリに出張して来た時だったと思いますが、その名のとおり雲のようにぼんやりと浮かんでいるのを見つけて感動しました。ホントに雲が浮かんでるように見えるんです。

そしてこの写真。前回と同じく夜シフトのお仕事が始まる前に撮ったので、撮影時刻は現地時間午後9時半くらいだったでしょうか。その時の大マゼラン雲の高度はおよそ10度。こんなに淡い天体がこんなに低い高度でちゃんと写真に写るということが、アタカマの空の素晴らしさを如実に表していると言えます。撮影場所のOSFから見て西の方角には平野にオアシスが点在するため、ところどころに人工の明かりがありますが(と言っても天体写真の邪魔になるほどではまったくないですが)、このマゼラン雲が見える南の方角には人工の明かりがまったくありません。邪魔な明かりもなく、さらに空気が澄んでいるおかげでこの写真が撮れたわけです。

4台見えるアンテナは、上述のとおりヨーロッパの企業連合が製造を担当しているアンテナです。ヨーロッパのアンテナは他の日米のアンテナと異なり、副鏡を支える部分が直線状をしています。例えば以前にブログ記事に日本のアンテナが写っていますが、パラボラの上に突き出している部分が円弧の形をしています。またこのヨーロッパアンテナは熱変形の極めて小さなカーボン素材を多用しています。技術的な困難もあったようですが、それを乗り越えて今は4台がほぼ組み上がった状態になっています。左の塔は、先日も書いたホログラフィータワーのもう1本。タワーの上の明るい星は、エリダヌス座の輝星アケルナルです。オリオン座の隣からずっと南に連なる「エリダヌス川」をかたどった星座の南の端です。もう少し時間がたてば大小マゼラン雲ももう少し高くに上ってくるのですが、いかんせん10時半からの夜シフトの観測当番があったので今回はこれで我慢。我慢というには贅沢な写真かもしれませんけどね。

投稿者 平松正顕 : 12:36 | 海外出張日記

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コメント

大・小マゼラン星雲は、こんな風に見えるのですか!
画面を拡大して見て、迫力にビックリしています。
マゼランの時代からの神秘的な光景も、最新の電波望遠鏡の上に輝いていると、不思議ですね。

エリダヌス座は、こちらでは半分くらいしか見られません。
アケルナルを見ることができて嬉しいです。

投稿者 sopuranovoce : 2010年9月28日 15:55

sopuranovoceさん、こんにちは。
はい、マゼラン雲はこんな風に見えます。もう少し空の高いところまで上る時間なら、もう少し見やすいと思います。今サンチアゴにいますが、こちらではさすがに空が明るくて見えないようです。でも南十字はしっかり見えて、壮観です。

投稿者 平松正顕 : 2010年10月2日 23:40

はじめまして。突然のコメント。失礼しました。

投稿者 バーバリー マフラー ピンク : 2013年1月16日 14:56

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