2005年12月26日

真の科学立国とは・・・?

今朝の朝日新聞朝刊の記事から。

「実利に傾く科学立国 基本計画『 5 年で 25 兆円』」

内閣府の総合科学技術会議(議長:小泉首相)が明日答申する第 3 期計画に関しての記事ですが、
今計画の目標は「社会、経済への成果還元」だそうです。
そして、「新しい産業や市場を生む『技術革新』を進め、経済発展と国際競争力の向上につなげる」と。
で、予算は 1.1 % 増やされるわけです。

この成果還元重視政策には大きな問題が 2 つあると思います。

一つは大学などでの教育がないがしろにされるのではないかという懸念。
国立大学の法人化後、国からの交付金減少のあおりを受けて研究教育費も目減りしている大学がほとんどです。
それは、研究費の予算の傾斜配分が理由の一つにあります。
すなわち、多くの大学において、
企業との共同研究や特許の取得などで研究者を競わせ、研究費を傾斜配分するのです。
すると当然、すぐに特許などのに結びつかない教育関連は不利になります。

もう一つは「基礎研究」がないがしろにされる可能性があるということです。
基礎研究はすぐに成果が見えないものがほとんど、となればそれに割く予算は削られる可能性が高まります。
上記の研究費予算傾斜配分でも、基礎科学は不利に陥ります。
しかし、基礎研究こそその名の通り全ての研究の基本となるものです。
目先の利益ばかり追っていては、日本の科学(技術)そのものが空洞化してしまいかねません。

天文学はまさに基礎研究。
宇宙の年齢が分かろうが、遠くの銀河までの距離が分かろうが、太陽以外の星の周りに惑星が見つかろうが、
ほとんど実利に結びつくことはありません。
もちろん、研究者はすばる望遠鏡をはじめ、国の予算で、国民の税金で作られた装置を使って観測等しているわけですから、
それを還元する義務はあります。

では、どのように還元するのか?
生活が物質的に豊かになったり、便利になったりするわけではありません。
しかし、我々が住んでいる宇宙がどうなっているのか、どのようのできたのか、これからどうなっていくのか、
我々が今ここに住んでいることは偶然なのか、必然なのか、
これは誰もが知りたいと思うものだと思います。

私たちはお金を払って美術館に絵を見に行ったり、コンサートを聴きに行ったり、いわゆる「芸術」というもの鑑賞しますね。
また、京都や奈良の寺院を巡ったり、城跡や遺跡を見に行ったり、いわゆる「文化財」にも触れに行きます。
紅葉を見に行ったり、桜の花を見に行ったり、瀑布や湖を見に行ったりもします。
それで生活が便利になるわけではありません。
私たちがそこに求めているのは、精神的豊かさ、心の安らぎ、知識的充足であったりするはずです。
これらを人は「文化」と呼んでいるのではないでしょうか。

ならば、科学が、宇宙の始まりをしることが、星の一生を理解することが、
岩石や鉱物の組成を知ることが、目にも見えないような素粒子の性質を探ることが、
科学的思考をすることが文化であってもいいはずです。
研究者は研究すること自体が楽しみであるはずですし、
市民にとってはそれらの成果を還元されることが、コンサートや美術館に行くのと同様、
文化になりうるはずです。

そして、文化財保護や芸術振興に予算を充てるのと同様、
実利を伴わなくても、予算を割り当てるべきだと思います。

確かに経済効果はないかもしれません。
ですが、世の中、カネがすべてではないはずです。

科学立国とは、
科学技術を発展させ、それを還元することで豊かな生活を営めるようにし、国を豊かにしていく、
これももちろん大事です。
しかし同時に、科学を楽しむ、科学を学ぶ・研究する、そのことが自然に文化として根付いている、
そういう国のことをさすのではないかと思います。

 #うわー、長々と書いてしまった。ちゃんと文章になってるのかな。まぁ、いいや。
  最後まで読んでくださって、ありがとうございます。

投稿者 KEN : 11:13 | -

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Chaussures Christian Louboutin : 2013年5月13日 20:09

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投稿者 cheap soccer cleats : 2013年5月13日 20:09

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投稿者 Celine Bags : 2013年5月14日 11:24

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