シミュレーションで宇宙の深淵をのぞく
趣旨
宇宙の森羅万象を数値化し、それを物理モデルに落とし込むことで、この世界の理解を深めていく。近代科学は、このような方法論によって発展してきました。
現代の天文学もまた、同じ構図の上で成立しています。現象のどんな側面に注目し、どのような手段によって数値化するのか、それをどのようなフレームワークを利用してモデル化するのか。すばる望遠鏡などの観測装置や、電磁気学や量子論、統計物理などの物理学は、それを支える強力なツールであると言えるでしょう。
近年、ここに新たに加わったツールがあります。「京」や現在開発中のポスト「京」に代表されるスーパーコンピュータです。パソコンなどの汎用コンピュータとは比較にならない膨大な計算量をこなすことで、それまでは不可能であったさまざまなシミュレーションを実現することが可能になってきました。太陽の中はどうなっているのか、星がどのように誕生するのか、銀河はどのように進化して今のような構造を取ったのか。そのような疑問に対して、それぞれの基本原理から数値計算によって解明していくことが可能になったのです。ガリレオ・ガリレイが望遠鏡を天体観測に用いて天文学の世界が一気に拓けたのと同じように、シミュレーションによって新しい天文学の世界が拓けつつあるのです。
しかし、よく考えてみるとわからないこともあります。シミュレーションは、本物の世界とは違います。ならば、シミュレーションによって、世界を理解したと言えるのでしょうか? そもそも、シミュレーションとは、いったいなんなのでしょうか?
今回のイベントでは、シミュレーション天文学の話題を入り口にして、科学の奥底に少し迷い込んでみたいと思います。この春完成した「シミュレーション図」や「宇宙図」を肴にしつつ、宇宙と科学とあなたの関係について、考えてみたいと思います。
開催情報
- 演題
- シミュレーションで宇宙の深淵をのぞく
- 内容
- 天文学や科学をテーマとしたトークイベント
- 日時
- 2017年9月11日(月)19:30-22:00
- 定員
- 20名(先着順)
- 参加費
- 500円
登壇者
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小阪 淳 氏
(こさか じゅん)
美術家。 2007 年カンヌ国際広告祭 2007Cyber Lions 銅賞受賞。2010年東京書籍「宇宙に恋する 10 のレッスン」出版 (共著) 。2000年 - 朝日新聞にビジュアル連載。2013年国立天文台「宇宙図 2013」制作に参加。2014年国立天文台「太陽系図 2014」制作に参加。 2015 年「光図2015」 制作に参加。「宇宙図@オンライン」制作。
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片桐 暁 氏
(かたぎり あきら)
東京芸術大学大学院修了。コピーライター/クリエイティブ・ディレクター。ジャンルを問わず、さまざまなブランド及びプロダクトにまつわる、ブランディング及び各種クリエイティブに従事。文部科学省「一家に1枚 宇宙図2007」制作に参加。’10年、最新の宇宙論を恋愛小説の体裁で解説した一般向け科学書「宇宙に恋する10のレッスン 最新宇宙論物語」出版(東京書籍、共著)。「太陽系図」「光図」制作委員会。
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諏訪 雄大
(すわ ゆうだい)
京都大学 基礎物理学研究所 特定准教授。2010年東京大学大学院博士課程修了、日本学術振興会特別研究員、京都大学特定研究員を経て、2013年より現職。2014年から2016年までミュンヘンのマックスプランク宇宙物理学研究所にて在外研究。大質量星の末期の瞬間である超新星爆発を軸に様々な高エネルギー天体の理論研究を行っている。
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吉戸 智明 氏
(よしと ともあき)
筑波大学計算科学研究センター主任研究員。2004年名古屋大学大学院理学研究科素粒子宇宙物理学専攻博士前期課程修了。1992年に名古屋工業大学工学部応用化学科を卒業後、化学薬品会社に就職。退職後、神戸大学理学部で素粒子理論、名古屋大学大学院で赤外線天文学の観測的研究を行った。名古屋大学在学中に科学ライターとして活動を始め、大学院修了後に科学系出版社へ。早稲田大学で科学技術ジャーナリズム教育に携わり、2010年から広報担当として筑波大学に着任した。おもな研究分野は科学広報。おもな著書は『大学はなぜ必要か』(共著,NTT出版)。
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高梨 直紘
(たかなし なおひろ)
東京大学 特任准教授、天文学普及プロジェクト「天プラ」代表。1979年広島県広島市生まれ。2008年東京大学大学院博士課程修了(理学博士)、国立天文台広報普及員・研究員(ハワイ観測所)、東京大学生産技術研究所特任助教を経て、現在に至る。天文学をベースに知を俯瞰することを目指した、統合的な研究活動を行っている(気がする)。
- 主催
- 学術コミュニケーション支援機構
- 協力
- 天文学普及プロジェクト「天プラ」、計算基礎科学連携拠点(代表機関 筑波大学計算科学研究センター)、 ポスト「京」重点課題9