これらは2003年12月3日〜5日に、佐賀県立宇宙科学館行われた第12回日本プラネタリウム協会(JPS)研究協議会で配布したアンケートの結果およびコメントです。 アンケートは受付にて参加者に主催者からの資料と共に配布させていただきました。有効回収数は29で、全参加者の総計86名(企業関係者28名を除く)に対し回収率は約40%程度です。回答者は1名を除いてプラネタリウム館スタッフ(1名は大学研究者)でした。プラネタリウム関係者の天文学に対する視点を調査するという目的から、以下の結果にはプラネタリウム関係者28名の結果のみが反映されています。
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1.天文学の普及に興味はありますか? (科学的な研究成果、例えば星形成領域の物理や宇宙論などの話題の提供など) |
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[コメント] 学生とプラネタリウム関係者が協力する大前提として、どれくらいのプラネタリウム関係者が天文学の普及に興味を持っているのかを探ることがこの質問の目的でした。結果は、「ある」「とてもある」あわせて100%、つまり未回収分も考慮すれば最低40%、全国のプラネタリウム300館中30館だと考えれば少なくとも10%の館は「天文学」の普及に興味を持っているということになります。もっとも、以下の調査で明らかになりますが、「天文学」という言葉に課している意味はプラネタリウム関係者の間でも収束したコンセンサスはありません。ましてや天文学の研究の立場にいる人間の認識ともまたずれていることも大いに考えられます(要調査)。「天文学」の普及にあたってどの程度のコンセンサスが必要なのか、そもそもコンセンサス自体が必要なのかどうかという点についてはまた場を改めて議論する必要があるように感じます。この項目に関しては、今後も調査を続行したいと考えています。 |
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2.天文学の普及に興味を持つ学生との協力事業に興味はありますか? | |||||||||||||||||||||||||
[コメント] これも多くの館が興味がある、と答えて下さいました。天プラにとってはとても大事な結果ですね。もっとも、元々学生との協力に興味を持っている方が回答を提出してくれやすいと考えるのが自然でしょうから、やはり前問と同じように“最低10%のプラネタリウム館は学生との協力に興味を持っているスタッフがいる”というのがこの結果の誤りではない解釈でしょう。全て館が学生との協力に興味を持ってくれるのが理想ですが、少なくとも学生との協力に興味を持っている館が存在するという事実がとりあえずは重要な結果であると思います。なお、この“協力事業”という言葉に関しては、もっと意味を限定するかあるいはより適切な言葉を見つけてくる必要を感じました。今後の課題とします。 |
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3.現在、既に学生との協力事業を行なっている場合は、それはどのような事業かお教え下さい。 | |||||||||||||||||||||||||
[回答] | |||||||||||||||||||||||||
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[コメント] 学生との協力事業の例を挙げていただきました。こうしてみてみますと、基本的には観望会を中心とした天文イベントのお手伝いという形が多いようですね。追跡調査によってより具体的な内容(どのような学生が、どのような能力を必要とされて、どのような目的のイベントに、どの程度の主体性をもって参加したのか)を明らかにしてみたいなと思いました。 |
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4.その他、館外の組織となんらかの協力事業を行なっている場合は、それはどのような事業かお教え下さい。(天文学会からの講師の招聘、天文同好会との共同観望会など) | |||||||||||||||||||||||||
[回答] | |||||||||||||||||||||||||
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[コメント] 外部との連携ということで、各館で行われている外部との協力事業の例を挙げていただきました。多くの館が積極的に外部との連携に動いている様子がうかがえるのではないでしょうか。もっとも、事業内容がどこも似ていることも否定できません(内容が似たり寄ったりなのは否定されるべきではなく、むしろそれがもっとも“効率の良い”事業だからだと私は思いますが)。既に行われているこれらの事業を基礎にしつつ、新しい発想の連携を提案・実現していく余地が十分に残されているように感じます。 |
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1.学生に期待するとしたら、以下のどれが該当するでしょう? (知識・発想力・人脈・低賃金・時間の自由度・その他( )) |
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※その他意見 ・行動力(2) ・協働の喜び ・まじめさ ・熱意 ・学生の研究テーマとしての共同研究 ・子供たちのお手本 ・最先端の研究者に触れる機会 |
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[コメント] プラネタリウムと学生が協力するとして、プラネタリウムは学生になにを期待しているのかを探ることがこの設問の目的でした。事前の予想としては、研究者などに比べてコストがチープな面や、一線で活躍する研究者などとの人脈もそれなりに魅力的なのではないかと考えていましたが、結果は「発想力」がもっとも期待されているというものでした。逆に、学生は自分のどこに自信を持っているのかを探る必要性も感じます。とりあえずは、多様な期待を持っていただいているということは天プラのような活動にとっては大きな後押しになるでしょう。 |
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2.学生に謝礼を支払うことに対してどう思いますか? (積極的に払いたい、可能なら払いたい、出来れば払いたくない、払わない) |
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[コメント] 夏の学校でとったアンケートによれば、多くの学生は可能ならば謝礼が欲しいと回答していたことを受けて、プラネタリウム館にお伺いをたてたのがこの設問です。結果は、「可能なら払いたい」という回答が約7割を占めました。この“可能なら”というのは、“予算に余裕があれば”というニュアンスを含んでいると思って良いでしょう。従って、多くの学生に継続的な普及活動を提案するのであれば、活動の楽しさや自己啓発的な側面をより強調する必要があると思われます。 |
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1.あなたは天文学に興味はありますか? | |||||||||||||||||||||||||
[コメント] ほぼ全員の方が興味があると答えてくださいました(当然、天文学に好意的な方からアンケートが回収されていると見るべきでしょう)。そのような中で、「そんなにない」と回答して下さった方が1名いらっしゃることは見落としてはいけないでしょう。プラネタリウムを使った普及をする際に重要なのは、まさに「天文学にそんなに興味がない」プラネタリウムだと私たちは考えています(そこでこそ天文学の知識を持った人間がいる意味が発揮されると考えています)。「天文学にはそんなに興味はないけど、うちでなにかやりたいというなら協力しないこともないですよ」と考えていただけることが、天文学の普及の観点からは重要です。 |
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2.興味がある場合、もっとも興味をひかれるトピックスをお教え下さい。 | |||||||||||||||||||||||||
[回答] | |||||||||||||||||||||||||
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[コメント] “プラネタリウム関係者の興味ある天文学”とはなにかを探るのがこの設問の目的です。ご覧の通り、素粒子から深宇宙まで見事に分かれたと思います。これはぜひ“天文学者の興味ある天文学”を調べて比較してみたいですね。 | |||||||||||||||||||||||||
3.あなたにとって最新だと思われる天文学の話題を1つ挙げてください。 | |||||||||||||||||||||||||
[回答] | |||||||||||||||||||||||||
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[コメント] “プラネタリウム関係者の思う最新の天文学”とはなにかを探るのがこの設問の目的です。回答者の多くが天文学に強い興味を示しているのを反映してか、比較的まとまった回答となったと思います。機を見て、おそらくは相当数いらっしゃると思われる天文学に積極的な興味はないプラネタリウム関係者の天文学に対する認識を探ってみたいと思います。天文学の普及をする際にとても重要なデータとなるのではないでしょうか。 |
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[全体総括] 「天文学とプラネタリウム」の活動の意義を確認するという意味では、十分な結果が出たと言えるのではないでしょうか。学生サイドだけではなく、プラネタリウムサイドにも学生との協力に興味を持っていただける方が大勢いらっしゃるということを確認できたことはとても有意義でした。 一方で、プラネタリウムにおける天文学の位置づけを探るという意味では、このアンケートでは不満が残ります。一番の問題は、そもそも天文学に興味を持たないプラネタリウム館からの回答が回収されていないことでしょう。我々が最終的に出て行くべき場は、そのような天文学にあまり興味を持たないプラネタリウムであると考えています。そのようなプラネタリウムは天文学の普及の場として使われることに対してどのように思うのか。そのようなプラネタリウム自身に天文学の面白さを伝えることは出来ないのか。色々と調べたいことはありますが、そのためには調査の手法を工夫する必要を感じます。 このアンケートを通じて浮かび上がった重要な事実のひとつは、「天文学」という言葉の持つ意味の多様性です。一概に「天文学の普及」と言っても、その前提となる「天文学」とは果たしてなんなのでしょう。これは、館と学生、館と館、学生と学生それぞれの間で多少なりとも認識にずれがあるのは間違いありません。ずれがあること自体は問題ではありません、むしろ自然です。知るべきは、様々な立場の人がそれぞれの目的に適って協力できる効率的な天文学の普及活動のために、最低限共有されるべき「天文学」という言葉の持つ意味についてでしょう。これについては、今後探っていきたいと思います。 最後になりましたが、このアンケートに様々な立場で関わって下さった方々、JPS研究会で発表の機会を与えてくださいましたJPSの皆様、どうもありがとうございました。この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。 【文責:高梨 監修:平松 作成:ナツガリ】 |